上皮は考える#7 内皮も考える

 筆者は米国留学中に脳血液関門を専門としているラボで、ヒト脳からとった初代培養内皮細胞を用いた実験をおこなっていた。
内皮には、シアストレス(shear stress、ずり応力ストレス)が常にかかっている。シアストレスは血管の新生やリモデリングに関与し、また動脈硬化や動脈瘤の発生との関連性があることが示唆されている。
 近年シアストレスは呼吸でも生じると考えられている。気道上皮でも、呼吸によるシアストレスが、上皮のバリア機能に影響を及ぼし、気道疾患の発現進展を修飾する可能性が考えられ、特に下気道では過換気症候群や運動誘発性喘息などとの関連に関する研究が開始されている。
 摘出気管や培養上皮細胞に、我々が開発した拍動流作成可能な流れ負荷装置と培養細胞に適用可能な改良型ウッシングチャンバーを組み合わせたシアストレス解析装置を適用し、流速と周波数を可変することにより、電気的バリアの状態が変化することを見出している。
ウッシングチャンバー

2014年の主な学会発表

▼鼻粘膜および鼻茸初代培養上皮細胞のIL-17A刺激による各種サイトカインの網羅的解析
  塩沢晃人 三輪正人、他
  第32回日本耳鼻咽喉科免疫アレルギー学会
  徳島市 2014.2.7

バリア機能からみた花粉症治療 -鼻粘膜の生理学的変化に迫る-
  三輪正人
  第33回花粉アレルギー研究会
  広島市 2014.2.20

眼から鱗の鼻の科学
  三輪正人
  第2回花粉症勉強会
  東京 2014.2.21 

バリア機能からみた花粉症治療 -Tough noseをいかにつくるか-
  三輪正人
  第120回札幌市耳鼻咽喉科医会学術研修会
  札幌市 2014.3.8

小児アレルギー性鼻炎診療の新しい視点
  三輪正人
  宮城県小児科医会学術講演会
  仙台市 2014.3.27

Point-of-Care Researchからみた花粉症外来の新展開
  三輪正人
  第15回徳島耳鼻咽喉科臨床セミナー
  徳島市 2014.4.3

Tough noseをいかにつくるか 鼻粘膜バリア機能をup-regulateするための戦略
  三輪正人
  第76回耳鼻咽喉科臨床学会
  盛岡市 2014.6.26
 
鼻噴霧用ステロイドによるスギ花粉鼻誘発前後のヒト鼻粘膜バリア機能の変化
  塩沢晃人 三輪正人、他
  第63回日本アレルギー学会
  東京 2014. 12.21

アトピー疾患研究所主催セミナーのご案内

Massachusetts General Hospital移植外科の河合達郎教授の講演のご案内です。
順天堂大学にて8月31日に予定されていますので、ご興味のおありの方は、お越しください。
ちなみに彼は高校(県立岐阜高校)の同級生です。
アトピー講演

上皮は考える#6 塩化亜鉛、ルゴール、グリセリン

 これらは、耳鼻咽喉科クリニックの日常臨床で一般的に使用されてきた薬剤であるが、病巣の粘膜上皮に働いて効果を発揮していることは間違いない。古くから記載されている塩化亜鉛の組織収斂作用の機序として、電気的バリアの増強が関連している可能性がある。
 上咽頭の塩化亜鉛処置は、古くは医科歯科大学の堀口らにより、最近では千葉の杉田らによりおこなわれている。堀口によりおこなわれた高濃度の塩化亜鉛の塗布は、粘膜のablationを起こすと考えられるが、より低濃度にかつ中性化することにより、バリア機能が高まり、過分泌状態が是正されることを、我々は確認している。
 グリセリンは、粘膜をコートすることにより電気的バリアの増強がおこることは容易に推察されるが、ルゴールは、その成分中に含まれるヨードがクロライドチャネルを活性化させ、最終的に分泌を増加させるのではないかと思われる。過分泌状態の炎症病巣には塩化亜鉛が、また分泌低下にある炎症病巣には、ルゴールの処置が適している可能性が示唆された。
 また、咽喉頭酸逆流症の病態改善に、至適な塩化亜鉛の局所投与(喉頭注入)が有効である可能性を示唆する結果も得ている。
蒸散
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