上皮は考える#5 ドライノーズ

 ドライスキン、ドライアイと異なり、ドライノーズの疾患概念はまだ不明確である。
花粉症の極期に大量の鼻汁がでているにもかかわらず、乾燥感を訴える方が多くおられる。
我々は代表的な非侵襲的測定方法の一つであり表皮のバリア機能の指標となることが証明されている水分蒸散量の測定を鼻粘膜に初めておこなっており、それにより下記の結果が得ている。
スギ花粉
1)鼻粘膜水分蒸散量は、年齢と共に増加する。このことは、鼻粘膜の加齢性変化は分泌低下によりおこるだけではなく、水分の蒸散の亢進の機序が粘膜の加齢性変化にも関与している。

2)スギ花粉抗原による鼻粘膜誘発試験をおこなうと、経時的に鼻粘膜水分蒸散量が変動する。このことから、アレルギー炎症により、粘膜水分蒸散量が増加する可能性が示唆される。

3)生理食塩水やグリセリン、ヒアルロン酸などの保湿剤点鼻あるいは塗布により、鼻粘膜水分蒸散量は一時的に低下する。このような鼻粘膜をコートするような物質により、鼻粘膜バリア機能が亢進する。
4)鼻粘膜上皮には扁平上皮部分および繊毛上皮部分の両者とも表皮と同様フィラグリンが存在していることを確認した。気管支粘膜ではみられず、バリア機能の観点から考えると、上気道は下気道より表皮に近いことが示唆される。

残暑お見舞い

残暑お見舞い申し上げます。
残暑見舞い2015
猛暑の日々が続きますが、いかがお過ごしでしょうか。
7月より、日本医科大学千葉北総病院から異動し千駄木の付属病院に勤務しております。
約半年での引っ越しで多少慌ただしくしておりますが、順天堂醫院の時と同じく、自転車で通えるようにはなりました。
また、お会いできるのを楽しみにしております。
酷暑の折、ご自愛の程心よりお祈り申し上げます。

平成27年 盛夏
三輪正人

上皮は考える#4 バリア機能

 生体の最前線である上皮は常に様々なストレスを受けているがそれに対する防御機構としてバリア機能が備わっている。
これは、輸送機能あるいは透過性の裏返しの現象であると考えられる。すなわち、イオンチャネルはイオン透過性を担っているが、電気的バリア機能としても機能していると考えられる。
最近のアレルギー研究の進展から、このバリア機能の破綻が、アレルギーを引き起こす始まりであると考えられている。

獲得免疫
【出典】三輪 正人, 三輪 真由美著: 「図でみる免疫学のABC」 免疫系の仕組みと基礎 獲得免疫. JOHNS 2013, 29(3):293-296. 

このことは、すでに皮膚科領域では周知の事柄だったようである。
アトピー性皮膚炎のもっとも軽い病期である皮疹のない前駆期では、炎症症状に乏しく乾燥症状のみが認められる。言い換えれば、炎症細胞の浸潤が起こらない前段階としてドライスキンの状態が存在することが知られている。花粉症でも同様遠藤、小澤らには飛散前の非特異的炎症状態が存在することを以前から提唱している。
また、近年の順天堂の小川、奥村、池田、高井らの実験をはじめとする研究の進展から、アレルゲンそのものがIgE非依存性にバリア機能を撹乱し、Th2を誘導する機序も明らかとなっており、アレルゲンの感作は表皮のバリア機能の破綻により二次的に惹起される現象であるとする可能性が唱えられている。その一つの根拠として、ケラチン形成に必須であるフィラグリンといわれる蛋白の表皮における発現が、損なわれていることが証明されている。
 

上皮は考える#3 皮膚は考える

手
「上皮は考えているみたいだね」となにげなく実験室の周りの方々に話していたが、数年前に「皮膚は考える」という資生堂研究所の傳田光洋主任研究員の著書を書店の店頭で見つけ、その意を強くした。
表皮と同じく、気道上皮も、生体防御機構の最前線として、生体恒常性維持のため、重要な役割を担っており、構成細胞の中でも最前線かつ最上位の司令官として、他の構成細胞や浸潤細胞に指令を出していると思われる。


 
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